◆半期に一回の独自調査「トレンドマップ2024上半期」を作成、全92キーワードについて調査
◆将来性のスコア伸長トップは、インバウンド月間300万人時代の受け皿「越境EC」に
◆進化・深化する「パーソナライゼーション」、「サブスク」は新サービス続々で成長余力に期待大
株式会社 日経BPは2024年5月14日、マーケティング専門メディア「日経クロストレンド」が作成した「マーケティング」「消費トレンド」「テクノロジー」の潮流を見極める「トレンドマップ 2024上半期」を発表、注目キーワードをランキング化しました。
マーケティング、消費トレンド、テクノロジーの3分野は変化が激しく、様々なバズワードが飛び交います。この中から、中長期的に注目すべきトレンド(潮流)の見極めを目的とし、日経クロストレンドの活動に助言する外部アドバイザリーボード約50人と、編集部の記者など各分野の専門家の知見を集約しました。その分析結果は、「将来性」と(現時点での)「経済インパクト」との2つのスコアでマッピングしています。
23年11月に実施した前回調査との比較で、今回将来性スコアが伸びたトップ3は、マーケティング分野では「サブスクリプション型コマース」「CX(顧客体験)」「チャットbot(対話型AI含む)」でした。また、消費トレンド分野では「越境EC」「節約志向」「TikTok売れ」「共働き」、テクノロジー分野では「VUI(音声ユーザーインターフェース)」「生成AI(ChatGPT、Copilot in Windowsなど)」「フードテック」でした。
一方、経済インパクトについて、全体でスコアの伸びがトップだったのは、マーケティング分野の「パーソナライゼーション」でした。そのほかのジャンルについては、消費トレンド分野では「越境EC」、テクノロジー分野では「生成AI(ChatGPT、Copilot in Windowsなど)」が、それぞれで最も高い伸びを示しました。
◆各分野でスコアを伸ばしたキーワードランキング(2023年下半期調査との比較)
今回の調査で新たに追加したキーワードは、マーケティング分野の「イマーシブ(没入体験)」、消費トレンド分野の「リユース消費」、テクノロジー分野の「宇宙テクノロジー」「五感テクノロジー」です。
◆新たに追加したキーワードの将来性スコア
今回のトレンドマップ2024上半期調査は、24年4月に実施しました。主なトピックスは以下の通りです。
なお、最新トレンドマップの全キーワードのスコア、詳細解説記事は、24年5月14日に日経クロストレンドのWebサイト(https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00448/00014/)で公開します。
◆トレンドマップ2024上半期「マーケティング分野」の例
【トレンドマップ2024上半期のポイント】
◆将来性のスコア伸長トップは「越境EC」、進化・深化する「サブスク」も成長に期待
前回の調査から、将来性スコアが最も大きく伸びたキーワードが、消費トレンド分野の「越境EC」です。0.27ポイント増の3.67となりました。越境ECは、外国語対応のECサイトに外国人消費者を呼び込み、商品を海外発送するネット通販の一手法です。
経済産業省の調査によると、2022年の越境EC市場規模は米国向け(米国の消費者が日本から商品を購入)が前年比6.8%増の1兆3056億円、中国向け(中国の消費者が日本から商品を購入)も同5.6%増の2兆2569億円となりました。直近では訪日外国人の数が24年3月に単月では初となる300万人超となるなどインバウンド需要は加速の一途をたどっており、今後日本で出合った商品を帰国後に追加購入する際の受け皿として越境ECに期待を寄せる企業の増加が、将来スコアの上昇という形で表れました。
マーケティング分野で、将来性スコアが最も伸びたのは、0.12ポイント増の3.84となった「サブスクリプション型コマース」(以下、サブスク)です。定額で使い放題となるサブスクは、動画配信や音楽配信などのソフトに続いて、パナソニックが小型食洗機「SOLOTA」を月額1290円(税込み)で提供しているように、ハードも含めて裾野が広がりつつあります。
最近では、特定のジャンルに向けた“ニッチ化”も進み、例えば花王は24年4月、スキンケアブランド「Curél(キュレル)」で極薄ヴェールをつくる化粧液を月額3980円(税込み)から定期的に届けるサービスを開始。ブランド初となるサブスク事業で、化粧液を顔などに吹き付ける専用機器とセットで提供しています。矢野経済研究所は、2024年の国内サブスク市場は前年比4.2%増の9831億円になると予測しており、いまだ成長の余地が大きいことが本調査から分かりました。
消費トレンド分野の「節約志向」がジャンル別の将来性スコアの伸びで2位にランクインしたのは、世相を大きく反映したものと言えます。世界的インフレによる原材料費の高騰は依然続いており、価格の再値上げなどの対応に迫られる企業は少なくありません。価格・料金に対して敏感になった消費者のブランド離反を防ぐために有効な手立てを打てることがより肝要になると、専門家の多くが考えていることが分かりました。
◆経済インパクトのスコアで最も伸びたのは「パーソナライゼーション」
経済インパクトについては、前回調査から最も高い伸びを示したのは、マーケティング分野の「パーソナライゼーション」(スコアは0.48ポイント増の3.36)でした。消費者一人ひとりが自分の趣向に合わせて形や色を選べたり、体質などにマッチするようカスタマイズできたりと、ここ数年パーソナライゼーションが可能なサービスが増えています。
パーソナライゼーションはこれまでファッションやクルマなどが中心でしたが、最近は食品業界にも波及しています。例えばカルビーは、消費者に検査キットを届け、全57タイプの中から一人ひとりの腸内環境にあったグラノーラを定期的に届けるサービス「Body Granola(ボディグラノーラ)」を23年4月にスタート。24年4月には、管理栄養士とマンツーマンによる食事のコーチング(1回30分)が受けられる付加サービスの提供も始めています。
テクノロジー分野の経済インパクトでは、「生成AI(ChatGPT、Copilot in Windowsなど)」(スコアは0.32ポイント増の3.32)が、伸びで1位となったのが注目です。ChatGPTの開発元である米オープンAIは24年4月、アジア初となる拠点を日本に開設。また、法人向けに処理速度を従来の約3倍高速化した大規模言語モデル(LLM)「GPT-4」の日本語版を提供することも明らかにしました。
オープンAIと提携する米マイクロソフトも同月、生成AIによる需要急増を見越して、今後2年間で29億ドル(約4400億円)を投じて日本国内のデータセンターを拡充することを発表。その期待の高さが調査結果にも反映された格好です。
◆新キーワード「リユース消費」はジャンル別将来性スコアで15位に
今回追加した4つの新キーワードのうち、注目は「リユース消費」です。消費トレンド分野のジャンル別将来性スコアランキングで15位となりました。
良品計画が、顧客から回収した商品を藍色や黒などに染め直して再販売する「ReMUJI(リムジ)」を提供するほか、23年にはユニクロも回収した衣料に染めと洗い加工を施し、ビンテージのような風合いにリメークした古着を期間限定で販売し話題を呼びました。Z世代を中心に、こうしたエコに対するブランド姿勢によって共感度が左右される傾向が強まっており、今後ますますリユース商品を好んで買う流れが加速すると専門家の多くが考えている事実が浮かび上がりました。
■「トレンドマップ2024上半期」の分析手法
調査は2024年4月に実施。編集部がマーケティング分野の30キーワード、消費トレンド分野の32キーワード、テクノロジー分野の30キーワード、計92キーワードを選定。それぞれを認知する人に、そのキーワードの「将来性」と現時点での「経済インパクト」とを5段階で尋ねてスコアリングしました。質問の選択肢は下記の通りです。
[将来性(=企業の収益貢献や社会変革へのインパクト)]
1.将来性は低い/2.将来性はやや低い/3.どちらとも言えない/4.将来性はやや高い/5.将来性は高い
[経済インパクト]
1.どの企業も収益を得られていない/2.一握りの企業(1~2割程度)の収益に影響している/3.一部の企業(3~5割程度)の収益に影響している/4.大半の企業(6~8割程度)の収益に影響している/5.社会全体になくてはならない存在
【日経クロストレンドについて】
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